トスカニーニの命日

50年前の今日、何をしていたかは思い出せません。思い出せなくても当然かも知れないけれど、少なくともクラシック音楽とは無縁だったと思います。

というのは、この日は大きなニュースが流れたはずで、音楽に関心があれば決してそのことを忘れることはなかっただろうと想像するからです。

そう、1957年1月16日にアルトゥーロ・トスカニーニが亡くなりました。
指揮者という職業が出現してから今日まで、トスカニーニを凌ぐプロフェッショナルはいないと思うのです。
指揮者の偉さを何で量るかは人によって意見も違うでしょうが、音楽的な純度の高さ、国民性や時代を超越して世界中で受け入れられる普遍性、後世への影響力の強さなどを総合すれば、トスカニーニの右に出る人はいない、というのが私の考えです。

フルトヴェングラー・ファンには怒られそうだけれど、彼の人の評価はドイツと日本だけに限られるローカルな現象と言えなくもない。まぁ、異論はあるでしょう。

トスカニーニが晩年に我が子のようにして可愛がった新進指揮者・グィド・カンテルリは、トスカニーニの死の前年、1956年11月24日にフランスで起きた飛行機事故の犠牲になって亡くなりました。その死はトスカニーニには知らされていなかったようです。

トスカニーニは確か1954年のコンサートで記憶が曖昧になり、自ら指揮棒を置きました。死までの3年弱は引退生活でしたが、世間のニュースなどには触れなかったのでしょうか。
いずれにしてもカンテルリの死から僅か54日後に後を追ったことになります。

今日は帰ったらトスカニーニのディスクを1枚聴いてみましょう。何が良いかな。やっぱりベートーヴェンのエロイカでしょうか。
トスカニーニのベートーヴェンを聴くと、昨今流行のピリオド系演奏がいかに偽善であるかが良く判ります。
その精神においてトスカニーニは遥かに彼等を凌駕し、現代楽器の性能と技術を最高度に駆使した鍛錬によって彼等を圧倒しています。
トスカニーニ死後の50年は一体何だったのでしょうか。今夜はそのことに思いを馳せましょう。

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